ズームX搭載の「ペガサスターボ」はエリートランナーのための”デザートシューズ”なのか?

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マラソン世界記録を更新したエリウド・キプチョゲ選手がトレーニングで使用している「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」。

ヴェイパーフライ4%や進化版「ネクスト%」にスポットが当たることが多いなか、世界記録ホルダーのトレーニングを支えるシューズの性能を紐解いてみます。

キプチョゲ選手がペガサスターボを使用した感想

ナイキ ズーム ペガサス ターボは着地時の衝撃から足を守る優れたフォームを搭載した、足に優しいシューズです。特に、常に雨が降っているケニアでは、ロードでも泥道でもどんな路面でも安心して走ることができます

着地時のクッショニングに優れており、雨天でも性能が発揮されるようです。

このシューズに搭載されたフォームによって筋肉の回復が本当に速くなると考えているので、長距離練習には主にナイキ ズーム ペガサス ターボを履いています。

長距離練習時の疲労回復を高める効果を感じられているようです。

このシューズはとても軽量で、グリップ力も高く、しっかりとしたタイヤのように足の裏でしっかりと地面をとらえることができます。

軽量かつ、”しっかり”のワードが2回繰り返されるほどに路面のグリップ力が高いようです。

次に性能面を見てみましょう。

 ヴェイパーフライ4%と同じくズームエックスフォームを使用

世界記録、日本記録を更新し世界を席巻したナイキ ズーム ヴェイパーフライ4%。

このシューズを履くことはもはやドーピングなのでは?という極論を呼ぶほどに記録を量産しつづけています。

そんな性能を支えているのが、Nike史上最軽量かつ最高のエネルギーリターン率を実現するズームエックスという素材。

航空産業の特殊な技術を用いて、限られた工場で丁寧に生産しているため量産化が難しいのだそう。

そのためヴェイパーフライ4%はロット数自体が少なく、お値段も一般的なシューズよりも高価であるため入手することが難しくなっています。

しかしヴェイパーフライ4%以外にもズームエックス素材を用いているシューズが存在しており、それが「ナイキ ズーム ペガサス ターボ」です。

ヴェイパーフライ4%を履いてマラソン世界記録を更新したキプチョゲ選手らから、普段のトレーニングでもヴェイパーフライ4%の感触を味わいたいという要望に応えてペガサス ターボが作成されたのだとか。

ヴェイパーフライ4%との違い

カーボンファイバープレートの有無

地面からの反発力と推進力をガイドするためのカーボンファイバープレートがペガサスターボには含まれておりません。

こちらはヴェイパーフライ4%の進化版「ネクスト%」のレイヤー図。ズームエックスフォームの上に、カーボンファイバープレートが備わっています。

それに対してペガサス ターボにはカーボンファイバープレートが存在していません。これにより、普段使いでも脚に優しいクッショニングを実現しています。

ではレースで使えるような性能は期待できないかというとそういうわけではなく、別物のシューズと考えた方が良さそうです。

ヴェイパーフライ4%やズームフライといった、カーボンファイバープレートを備えたシューズの恩恵を得ようとするには、ミッドフット着地やフォアフット着地といったある程度高い走りの技術を必要としていました。

一方でカーボンファイバープレートを備えていないペガサスターボは、ランナーに走りの技術を要求することなく、かかと着地からフォアフット着地まで、オールラウンダーとしてその性能を発揮してくれます。

また、強い反発力や推進力を得ることよりも、着地時のクッショニングに重点をおいており、初心者の方から上級者の方まで脚に優しく設計されています。

耐久性はペガサスターボの方が上

ヴェイパーフライ4%の性能発揮距離は160kmほどとされ非常に短命ですが、ペガサスターボはズームエックス素材とリアクト素材を組み合わせることにより800km程度の使用に耐えうるということです。

一般的なシューズの寿命が500~1000kmと言われておりますので、特に問題ないと言えるでしょう。

快適さを追求したアッパー

足中央部と土踏まずを包み込んで快適なフィット感を実現。かかと部分の履き口がアキレス腱に触れない角度の履きやすいデザイン。 (Nike公式サイトより)

前足部やアキレス腱にストレスを感じさせないように配慮しつつ、性能発揮のためのフィッティングはシューレースと連動したフライメッシュケーブルで確保しています。

かかとについている独特な傾斜は、かかとからつま先への滑らかな体重移動をサポート。(Nike公式サイトより)

このデザインは空気力学にも基づいており、徹底したエネルギーロスへの考慮がなされています。

耐久性に優れたワッフルパターンのアウトソールが、踏み出す度にあらゆる路面でグリップ力を発揮。(Nike公式サイトより)

見るからに地面を噛んでくれそうなアウトソールですね。私は初見でトレランシューズのように見えました。突起がある分、路面の衝撃吸収にも一役買ってくれているようです。

履いている方の感想

クッション性・反発性に優れたシューズ。ラン後の疲労感も他のシューズより軽減されているうように感じました。シューズの厚さがあるので暑い夏には蒸れないか少し心配。既述のように厚さがあるため超軽量というわけではないのでレースよりはロング走に向いているような気がします。耐久性に問題無さそうなので長くて履ける一足だと思います。

クッショニングは優れている一方、重量は感じられるようです。アッパーがしっかりしているという印象もあります。

坂道を走る際、電動自転車に乗っているような、そこまで足に力を入れなくてもスムーズに登っていけるよなそんな感覚がありました。(あくまでも個人的な感想ですが)

人によっては強い反発力・推進力をズームエックスフォーム自体から感じられる場面もあるようです。

3日ほどはいたが柔らかすぎる。レースには不向きな感じがした。

ソールの跳ね返りで走る固めの設定を好む人とっては、特にレースでは不向きなのかも知れません。

ペガサス34もジョギングで履いているが、このシューズ、柔らかな着地はそのままに軽やかに足が進んで行く。ただスピードを上げていくと、ズームフライに慣れているせいか、グングン脚が回転する感覚に乏しい。相性もあると思うが、スピード感を求めて履いたのでそこは減点。

ズームフライはナイロンプレート、ズームフライ フライニットはカーボンファイバープレートを備えており、それらの反発力・推進力を求める方には物足りなく感じるようです。

ズームフライ以上に感触はふわふわで、長距離向きだと感じました。

長距離走でクッショニングを大切にしたい場合には威力を発揮してくれそうです。

履いた感じも窮屈感は無く、ナイキにしては幅広めだと思います。

ナイキは細めのデザインが多いですが、ズームペガサスターボは特に前足部が幅広めとなっているようです。

 

いかがでしたでしょうか?長距離を快適に、より柔らかいクッショニングで走りたい方にとっては、初心者・上級者によらず味方になってくれるシューズではないかという印象を受けました。

特にフライ系でふくらはぎやアキレス腱に負荷を感じる方にとっては、新しい選択肢となってくれることでしょう。

また、路面の状態によらず吸収力の発揮を期待できることから、悪路を走り続けるトレイルランニングでの使用も個人的には検討してみたいと感じました。